大腸・肛門の病気について

裂肛  

マリーゴールドクリニック  山口トキコ

 

はじめに

裂肛は肛門上皮に生じた非特異的なびらん、裂創、潰瘍などの総称であり、俗に「切れ痔」といいます。

裂肛の有病率は三大痔疾患のうち約15%であり、2:3で女性に多く、特に20~40歳代に多いのが特徴です。診断は問診と触診、肛門鏡検査によって行われます。

一般的に裂肛は食事や生活習慣の改善、便通の調整と外用薬の投与が主となる保存的療法で軽快し、外科的治療に移行する患者は約1割程度といわれています。

 

病因

  1. 肛門上皮損傷説:硬い便が肛門管を通過する際に生じ、その多くが慢性便秘症です。また下痢によって悪化する場合もあります。
  2. 肛門腺感染説:痔瘻と同じく肛門小窩の感染によって裂肛が誘発される場合もあります。
  3. 肛門上皮の虚血説:肛門後方の血流は他の部位の半分以下で、末梢血管が疎であることが裂肛の好発と関係していると推測されています。
  4. 肛門管静止圧上昇説:圧の上昇により肛門管の血流が減少することで裂肛が生じやすくなると考えられています。
  5. 1)~4)に述べた病因が一つではなく複数のことも多く、患者さんにより異なるのが現状です。

 

症状

1)痛み:肛門上皮は痛みを感じる部分なので硬い便で傷が付くと痛みを感じます。痛みの程度は排便時のみで軽いのが一般的ですが、排便後もしばらく痛みが続くこともあります。特に肛門狭窄になると痛みはさらに強くなります。狭窄には内括約筋の痙攣という機能的な場合と肛門上皮および内肛門括約筋の硬化による器質的な場合があります。

2)出血:色は鮮紅色で量は便や紙に付く程度で多くはありませんが、便器が真っ赤になることもあります。

3)違和感・脱出・掻痒感:裂肛が慢性化して皮膚の突起物(見張りイボ)やポリープができて大きくなると脱出や違和感、掻痒感を生じることがあります。

 

分類

1)急性裂肛:硬い便で肛門上皮が過伸展されることよって起こる単純な機械的損傷

2)慢性裂肛:潰瘍状の深い傷で潰瘍底には内括約筋の筋線維を認めることがあります。また口側には肛門ポリープ、肛門側には見張りイボができることがあり、潰瘍、肛門ポリープ、見張りイボは裂肛の三徴といわれています(図1、図2

3)脱出性裂肛:痔核や肛門ポリープがくりかえし脱出する際に肛門上皮が牽引されてできます。

4)症候性裂肛:全身性疾患の部分症状として肛門部に裂肛が生じるものでクローン病による裂肛などがあります。

図1慢性裂肛.jpg図1

図2慢性裂肛・肛門ポリープ.JPG図2

 

治療

1)保存的治療法 

a)便通の調節:便秘や下痢を起こさないように食事をコントロールすることが大切です。便秘に対しては水分と繊維成分を十分に摂取すること、また必要に応じて膨張性下剤を中心に内服を行います。

b)肛門の衛生:痛みや見張りイボにより肛門の衛生が保てないことも多いため、入浴・坐欲が有効です。また温まることで血流が良くなり、傷の早期治癒や痛みの改善につながります。

c)外用薬(表1・内服薬:局所麻酔薬やステロイド含有の注入軟膏や座薬があり、症状によって適宜使用します。また鎮痛薬や抗炎症薬の内服を併用することもあります。

表1裂肛治療に使用される外用薬.pdf

2)肛門狭窄における外科的治療

a)肛門拡張術:切開は行わず、肛門に指を挿入して広げる方法です。軽度な機能的な肛門狭窄に行われます。

b)側方内括約筋切開術:肛門の皮膚からメスを入れ、狭くなった内括約筋を浅く切開します。機能的な肛門狭窄に行われます。

c)肛門皮膚弁移動術:裂肛部分および肛門ポリープや見張りイボを切除し、肛門の外側の皮膚の一部を移動して肛門を広げる手術です。器質的な肛門狭窄に行われます。

 

まとめ

裂肛は急性であれば短期間で治りますが、原因となる便秘が改善されないとくりかえします。その結果肛門狭窄になると手術が必要になります。他の病気と同じように早めに治療して悪化させないことが肝要です。また痛みや出血が長引く場合悪性腫瘍の可能性もありますので、自己判断はせず肛門科専門医を受診してください。

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