大腸・肛門の病気について

 大腸CT検査(大腸3D-CT検査・CT Colonography)

福島県立医科大学会津医療センター 小腸・大腸・肛門科 遠藤俊吾

【大腸CT検査とは】

 画像診断装置の発達と画像解析の進歩により、医療の分野でも3次元画像が扱えるようになりました.大腸検査においてはCT検査*により得られた情報から、大腸内視鏡検査**や注腸検査***に類似した画像を作り出すことが可能となり、日常臨床現場で使われ始めています.日本においては、大腸CT検査は大腸癌の術前検査として発展して来ました.さらに現在では欧米の臨床試験をはじめ,日本でも多施設共同臨床試験(JANCT****)による大腸腫瘍の精度検証が行われ,大腸がん検診の検査法の一つとして認識されるようになっています.

 

【大腸CT検査による画像】

 CTデータから腸管に注入した炭酸ガス,あるいは空気だけを画像化して,腸管の鋳型として画像を再構成します.再構成した画像をみる視点を大腸内において,大腸の走行に沿って動かした場合は動画1のバーチャル内視鏡像となり,体外に設定した場合は動画2の注腸類似画像となります.動画1では直腸に進行癌を認めますので,確認してみて下さい. CTデータから作りだしたバーチャル(仮想)画像ですから、360°どの方向からみた画像でも作り出せますし、あとで必要な画像を作り直すこともでき,再現性・客観性の高い検査と言えます.この点が検査者の撮影した画像しか評価できない内視鏡検査と異なる点です.

 

【大腸CT検査の実際】

 大腸CT検査においても、良い画像を得るためには腸管の前処置が必要です.大腸内視鏡検査と同様に2リットル程度の多量の下剤を飲んで大腸をきれいにしてから検査を行う方法が一般的でしたが、最近では従来の半量以下の下剤でも高い精度が得られることが判明しました.
 検査の際は肛門から大腸内に炭酸ガスを入れてCT撮影を行います.1回の撮影時間は20秒程度で、原則として2体位での撮影を行います.検査全体でも15分程度で終わります.大腸内に造影剤としてバリウムを注入しないので検査後にバリウムの排出を気にする必要はありません.また、大腸内視鏡検査では、内視鏡の挿入に伴う痛みを感じることがありますが、この検査では炭酸ガスを注入するだけなので強い痛みを感じることはありません.炭酸ガスは生体での吸収は空気の100倍以上早いため,腹部膨満感も検査後すみやかになくなります.

 

【大腸CT検査のメリットとデメリット】

 大腸癌による狭窄や術後の癒着などにより、大腸全体の内視鏡検査が困難な症例に対して大腸CT検査は有用です.手術前の検査としては,注腸類似画像に血管や骨などの画像を重ねることにより,手術のシミュレーションも可能です.また,合併症がほとんどないこともメリットの一つです.デメリットとしては,組織採取ができないこと,ポリープ切除などの治療ができないことが挙げられます.大腸癌検診への利用を考えると放射線被曝が問題となりますが,最近では画像処理の進歩により放射線被爆を少なくした低線量撮影が行われています.

 

【大腸CT検査の大腸がん検診への応用】

 日本の大腸内視鏡検査は、技術、普及度のいずれからみても世界のトップです.このため、大腸がん2次検診は内視鏡検査が主流です.一方,大腸CT検査は欧米や日本での臨床試験の結果からは10mm以上の病変の描出においては大腸内視鏡検査に劣らない結果を得ていますが,小さな表面型大腸病変の診断能が低いことが問題です.
 日本でのがん死亡原因のうち,大腸癌は男性で3位,女性で1位と大腸癌死亡が多い現状があります。一方で大腸がん検診の受診率は25%程度と低率で、便潜血反応陽性で精密検査が必要とされた方の受診率も50%程度と低率です.精密検査の受診率が増加しない理由の一つに大腸内視鏡検査への不安があげられると考えます.大腸CT検査は3D(3次元),あるいはバーチャルといった検査名から被験者の心理的負担が軽減されるとの報告もあります.こうした状況から、人間ドックで内視鏡検査を希望されない場合のオプションとして臨床応用が始まっております.

*CT検査:レントゲンにより、身体の横断像や縦断像をみることができる検査.
**大腸内視鏡検査:細長いチューブの先端にカメラを内蔵した内視鏡を肛門から大腸に入れて、大腸のなかを調べる検査.
***注腸検査:肛門から大腸の中にバリウムと空気を入れて、レントゲン撮影をする検査.胃のバリウム検査でも使用する造影剤バリウムを飲む代わりに肛門から注入する.
****JANCT:正式名称は,「大腸3D‐CT検査(CT colonography)と大腸内視鏡検査による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討─コンピュータ支援診断を活用した多施設共同臨床試験:Japanese National CT Colonography Trial」.

動画1:http://youtu.be/5czULsv-aNM
バーチャル内視鏡像.CT画像を再構成する際の視点を肛門から盲腸に向かって腸管内を動かすことにより内視鏡に類似した画像を得ることが出来る.この動画では肛門から観察してしばらくすると右下に大腸がんを観察することが出来る.
動画2:http://youtu.be/rmDlMwVIZcQ
注腸類似画像.画像を再構成する際の視点を体外において,大腸全体を炭酸ガスで作った鋳型として観察する.バリウムと空気を注入して行う注腸検査に類似した像が得られる.

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