大腸・肛門の病気について

 大腸腫瘍の内視鏡的治療

がん研有明病院  五十嵐 正広

内視鏡治療の適応となる腫瘍は、隆起を主体とするいわゆるポリープ(隆起型腫瘍:図1)とわずかな隆起や陥凹を主体とする表面型腫瘍(図2)に分類されます。ここでは大腸の腫瘍に対する内視鏡治療を中心に解説します。


図1

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図2

図2

<ポリープとは?>

 大腸に発生するポリープに関する一般的なことがらを解説したいと思います。ポリープとは、"限局した粘膜の隆起"と定義されています。つまり見た目の形態を表す言葉であり、ポリープを構成している細胞を表す言葉ではありません。したがって、ポリープには、良性の病変から悪性の病変まで含まれます。少し専門的になりますが、ポリープの組織を形成する細胞によって、癌、腺腫、過形成性ポリープ、過誤腫、炎症性ポリープ、その他に分類されます。


<治療法は?>

 ポリープで治療の対象となるものは、癌と腺腫です。その方法は、内視鏡的に摘除する方法と外科的な治療法があります。内視鏡で摘除できるかどうかは、大きさや、肉眼形態、部位、組織、癌の深達度(癌の浸潤の程度)によって決定されます(図3)。現在行われている内視鏡的治療法を図3に示しました。一般の病院で行われているのは、高周波を用いたホットバイオプシー(図4-a,b)、スネアポリペクトミー(図5-a,b)、粘膜切除術(図6-a,b)、粘膜下層剥離術(図7-a,b)などの方法です。どの方法を選択するかは病変の大きさや形態によって内視鏡施行医が選択しますがその目安としては、ホットバイオプシーは5mm以下の小病変、スネアポリペクトミーは、有茎性、亜有茎性病変、粘膜切除術は無茎性病変、粘膜下層剥離術は2cm以上の腫瘍などを主な対象とします。なお、表面型腫瘍に対する治療法としては、主に粘膜切除術や粘膜下層剥離術が選択されます。


図3

図3

図4-a

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図4-b

図4-b

図5-a

図5-a

図5-b

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図6-a

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図6-b

図6-b

図7

図7

<早期癌は内視鏡で治療できる?>

 大腸癌は浸潤度(組織学的壁深達度)によって早期癌と進行癌に分類されます(図8)。さらに早期癌は粘膜固有層に限局するものを粘膜内癌(M癌)、粘膜下層に浸潤するものを粘膜下層浸潤癌(SM癌)に分類されます。SM癌は、癌の浸潤を粘膜筋板からの距離で評価します。また、粘膜下層の浸潤度に応じてSM1,SM2.SM3と細分類する相対分類という方法も行われています。
 内視鏡的治療のみで根治可能と考えられる癌は、M癌と、粘膜筋板から1,000マイクロメーター(1mm)以内のSM癌とされています。しかしSM癌の場合にはリンパ節転移や血行転移の可能性があるのでこの基準は絶対的なものではありません。病変の部位や大きさ、患者様の背景因子などによって外科的処置(腸切除)を選択することもあります。また、内視鏡治療を行う際、SM浸潤度が1mm以内かそれより深いかを正しく診断できる診断能は、現在のところ100%ではありません。したがって、内視鏡で摘除した後の組織学的な検査で、浸潤の距離に加えて、断端に癌が存在するか否か、脈管に癌が入り込んでいるか否か、組織学的な分化度(癌の悪性度)、浸潤最深部の癌細胞の性状など(これらをリスクファクターと言います)を判断して、内視鏡治療後、追加の腸切除やリンパ節郭清が必要な場合もあります。


図8

図1

<おわりに>

 現在一般的に行われている大腸腫瘍に対する内視鏡的治療法につき解説しました。内視鏡的治療の最大のメリットは、少ない侵襲で短時間に治療が行えることです。そのためには、早期発見が重要です。

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