大腸・肛門の病気について

 急におしりが腫れた方へ

西新井大腸肛門科 秋葉原サテライトクリニック 奥田哲也

昨日まで、なんともなかったおしりが急に腫れて痛む。
おそるおそる鏡で見てみたら、人間のおしりとはとても思われないひどい状態。
いったいこれは・・・・
こんな症状を抱えて、肛門科の「高ーぁい敷居」をようやくまたいで外来にいらっしゃる患者さんが、本日もいらっしゃった。
「先生っ!悪い病気ならはっきりとおっしゃって下さい!!」
なんて、悲壮な面持ちで質問される患者さんに、診る前から
「大丈夫ですよー。お話だけでどんな病気か判ってしまいました。」
と涼しい顔でおしりを診てみる。
「やっぱり!」
そんなわけで、今回は急におしりが腫れて痛む病気のベスト3の発表します。

 

◆第三位 かんとん痔核◆

肛門の周囲や肛門から入って3cmくらいまでには、血管が網の目のように集まっている静脈叢(じょうみゃくそう) という部位があります。
この静脈叢 が大きくなって出血や腫れ痛み脱出などの症状が出るものを痔核といいます。
この静脈叢 、『痔核になるために存在する』やっかいな組織だとだけ考えるのは大間違い。
下痢のような便でも漏れることがないのは、この静脈叢が、いわば水道の蛇口の『パッキン』の役目をしているからです。

かんとん痔核は、この静脈叢 の部位で血が固まって血栓を作り、肛門の中も外も大きく腫れ上がって、肛門の中に戻らなくなった状態をいいます
肛門が、突然大きく飛び出してくるので、慌てて中に押し込もうと思いがちですが、肛門の外も大きく腫れている場合は、無理に押し込んでも痛いだけですぐに出てきてしまいます。

治療の原則は、保存的療法。
肛門を入浴やカイロの使用で暖め、痔の軟膏を腫れている部位に塗って安静にします。
痛みが強ければ鎮痛剤が効果的。
大きな腫れや痛みは一週間程度の間に徐々にやわらぎ、腫れが完全に引くには数週間かかりますが、最終的には元の形に戻ります。

かんとん痔核発症直後

かんとん痔核発症直後の肛門の写真です。
右下の赤黒い部分が内痔核の粘膜で、それ以外の突出している部分は外痔核です。
外痔核部分には、内部にある血栓(矢印)が黒く透けて見えています。
全体にパンパンに腫れあがって、痛みは強く、本来外にある外痔核部分が大きく腫れているので、肛門内に押し戻すことは困難です。

発症4日目

発症して4日目。
腫れは残っていますが血栓はあまり目立たなくなり、よく見るとシワができていて、腫れが引いてきているのが判ります。
痛みも、かなり軽くなってきます。

発症11日目

発症11日目。
さらに腫れが引き、シワも増え、血栓は全く見えなくなっています。
痛みはほとんど感じないので、このあと数週間かけて腫れが完全に引いて元の状態に戻るまで待ちます。
痛みがなくなれば、軟膏などの薬も不要となります。
完全に腫れが引いた状態で、排便時に痔核が脱出してくるのを治そうと思えば、手術やALTA療法(注射による痔核硬化療法)の適応となります。

 

◆第二位 肛門周囲膿瘍◆

肛門から入って1.5cmくらいの肛門と直腸の境目に、肛門小窩と呼ばれる小さなくぼみが10カ所程度あり、ここから便中の細菌が侵入して化膿したものを肛門周囲膿瘍と言います。
従って、下痢便だと小さなくぼみから便が侵入しやすく、肛門周囲膿瘍の一つの原因に下痢があげられます。
特徴は、化膿が進んで膿がたまるにつれて痛みが徐々に増してくること。
腫れの形は膿のたまる場所や量によって違ってきます。
肛門の表面近くで貯まると、なだらかな山の様な形の腫れが生じ、さわると「ぷくぷく」と、ちょうどゴムボールをへこませるような感じで膿のたまりが判ります。
肛門の深い部分に膿がたまると、表面的にはわからなくても、肛門の奥の方が痛むという症状が出ます。
大量の膿がたまると、高熱が出ることもあります。
肛門周囲膿瘍に、痔の座薬や軟膏を使っても効果はありません。
また、膿がたまってから抗生物質を使っても、あまり効果は期待できません。
膿のたまりをなくして感染を終息させるには、切開排膿を行った後、抗生物質の投与が必要です。

肛門周囲腫瘍

画面で肛門の左下の光っている部分が、肛門周囲膿瘍によって膿がたまっている部分です。
表面から触ると、膿のたまりが判ります。

肛門周囲腫瘍の局所麻酔

肛門周囲膿瘍の部分に局所麻酔を施し、小さく切開することによって血液の混じった膿が流れ出しています。
この処置により、痛みは軽くなり、『這うようにして病院に来た患者さんが、スキップをして帰れる』くらい楽になります。
肛門周囲膿瘍を患ったら我慢せずに、早く病院を受診しましょう。

 

◆第一位 血栓性外痔核◆

輝く、『急におしりが腫れたで賞』は、この病気。
ある朝、何となく肛門が痛いと思って、鏡で覗くと肛門の出口に接するような形で「ぷっくり」とふくれている。
痛みの程度は激痛から違和感程度まで様々。
これは、かんとん痔核と同じように静脈叢の部位で血栓ができて腫れているものです。
かんとん痔核よりはかわいらしいのですが、できる場所が痛みを強く感じる肛門の出口付近なので、小さくてもシッカリと存在を主張してきます(写真1)。
また、腫れた部分の皮膚が破れて血栓が露出すると、血栓が溶けた赤黒い血液がしみ出してきます(写真2)。

治療方針は二種類
早く「ぷっくり」を無くしたいのであれば、皮膚を小さく切って血栓を取り出します。
「痛い処置は死んでも嫌だ」という方には、鎮痛剤と痔の軟膏の治療で血栓が自然に吸収されるのを待ちます。
肛門の傷は治るのに時間がかかるので、切らずに保存的に治しても、完治までの時間はかわらないこともあります。

写真1

写真1:皮膚のすぐ下に、固まった血栓(血豆)があるので、触るとコリコリした硬い塊を触れます。
3日ほどで痛みはひきますが、コリコリした塊が完全になくなるには、数週間を要します。

写真2

写真2:皮膚の一部が破れて、血栓が露出し、溶けた血栓がしみ出しています。
このような状態になったら、下着を汚さないようにガーゼなどで覆って血栓が溶けて出てしまうのを待ちます。
消毒は必要なく、排便後に洗浄する程度で充分です。

どうですか。写真を見ておおよその見当はつくでしょう(^^)v
でも、適切な治療を行って快適なおしりで過ごせますよう、肛門科を受診してくださいね。

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