大腸・肛門の病気について

 便秘について

東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター 山名哲郎

どんな人に便秘が多いか?
便 秘は若い人から高齢の人までどの年齢層でもみられる排便の悩みの一つです.全体的には男性よりも女性のほうが多い傾向がみられます.女性は10代の思春期 から便秘になる人が多く,その後は一定していますが60代以降から右肩上がりで増加しています.男性は若い時には便秘で悩む人は多くはありませんが,60 代以降は女性とほぼ同じくらい便秘になる人が増えてきます.

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便秘の症状は?
便 秘と一口でいっても「何日も便が出ない」,「下剤を飲まないと便が出ない」「便が硬い」「便が小さい」「いきんでも出にくい」「残便感がある」「指でかき だす」など様々な症状があります.便の回数は個人差があり1日3回から3日に1回までは正常とみてもいいのですが,1週間の便の回数が3回未満の人は便秘 といえます.また「便が硬い」「便が小さい」「いきんでも出にくい」「残便感がある」「指でかきだす」などの症状のうち2つ以上の症状が頻繁にある人も便 秘といえます.

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便秘の原因は?
毎日の生活習慣,腸や骨盤底の働きの異常,全身の病気,薬など様々なことが便秘の原因になります.偏食やダイエットにより食物繊維の摂取量が不足すると便が少なくなり便秘になりやすくなります.また体を動かすことが少ないと腸の蠕動運動が不活発になり便秘になります.
自律神経の影響で腸の蠕動運動が低下する過敏性腸症候群も多くの人が便秘症状を伴います.骨盤底にある直腸やその周辺の異常によって便が出にくくなる人もいます.大腸がんが便秘の原因になることもあることもあります.


ホルモンの病気や神経の病気も便秘の原因となります.また薬の中には副作用として便秘になるものもあります.病気や薬がきっかけで便秘になった場合はかかりつけの医師とよく相談してみてください.

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便秘のタイプは?
一番多いのは腸の蠕動が弱いため腸の通過に時間がかかるタイプの便秘です.弛緩性便秘とか通過時間遅延型便秘と呼ばれています.症状は「何日も便が出ない」という排便の回数が少ないことが特徴です.
骨盤底の知覚の問題で便が出にくくなるタイプの便秘もあります.直腸性便秘とか便排泄障害型便秘と呼ばれ,症状は「いきんでも出にくい」「残便感がある」など便が出にくいのが特徴です.
腸と神経のバランスがくずれて腸の蠕動運動が不安定になるタイプの便秘もあります.過敏性腸症候群の便秘型がこのタイプに相当し,痙攣性便秘とか通過時間正常型便秘と呼ばれ,腹痛や腹部膨満感を伴うことが特徴です.


便秘の時には自分でどうすればいいの?
ま ずは食事や運動などの生活習慣を見直しましょう.食物繊維の摂取不足や運動不足になりがちな人は意識してこれらを増やす努力をしてみてください.食物繊維 はサプリメントとして摂ることも効果的ですし,運動といっても散歩や買い物の歩く距離を伸ばすような,確実に毎日続けられることから始めてみてください.
それでも便秘が治らない場合は市販の下剤を必要な時だけ最小限に服用するようにしてください.習慣的に服用してしまうと薬がだんだん効かなくなることがあります.薬局で相談してできるだけ穏やかな薬からはじめたほうがいいでしょう.


どんな時に病院へいったらいいの?
便 秘の症状が続いて毎日の生活に支障を来す場合は市販の下剤にたよらずに病院を受診してください.便に血液が付いたり混ざっていたりした場合,腹痛やお腹の 張りを繰り返す場合も必ず医師に相談してください.また体重が急に減ったり毎日気分がすぐれない場合も受診が必要です.今まで順調であった便通が最近に なって便秘ぎみになったり,すっきり出なくなったりする症状が1ヶ月以上続く場合もあまり長く様子をみずに医師に相談してください.


便秘で受診したらどんな検査をするの?
ま ずは受診した時に便秘症状を詳しく問診します.その他の症状や服用薬,既往歴などもいっしょに詳しくお聞きします.問診に続いて腹部と直腸肛門の診察をし ます.問診や診察で疑われる病気によってはその日のうちに腹部の単純レントゲン写真や血液検査をすることもあります.大腸カメラまたは注腸レントゲン検査 は腸を空にする前処置が必要なので後日に行います.骨盤底の原因を詳しく調べる検査として排便造影という特殊な検査を行う場合もあります.

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病院ではどんな薬が処方されるの?
一 般的に便秘に対して処方される薬は緩下剤です.酸化マグネシウム系の薬(カマ,マグラックス,ミルマグなど)は便を柔らかくする薬ですが,腸への刺激性が なく穏やかな効き目を示すため毎日服用するのに適しています.1日の使用量が2グラム以内であれば便の硬さによって減らしたり増やしたりと自分で調節しな がら服用しても大丈夫な薬です.
刺激性下剤(ブルゼニド,アローゼン,ラキソベロンなど)は腸の蠕動を刺激して便を出やすくする薬です.慣れない とお腹がしぶる痛みを感じることがあります.また逆に腸が慣れてしまうと下剤としての効き目が鈍くなることがあり,服用量が次第に増える傾向があります. 漫然と習慣的に服用せず必ず処方してくれる医師と相談しながら服用してください.
比較的新しい下剤として小腸からの腸液の分泌を増やして自然に便 を出やすくする分泌性下剤(アミティーザ)があります.刺激性下剤のようなお腹のしぶるような痛みを伴うことがなく長期に服用しても効き目が悪くなること はありません.服用後に吐気や下痢がみられる場合は医師と相談してください.
他にもビフィズス菌製剤や乳酸菌製剤などの整腸剤(ラックB,ミヤBM,ビオスリー,ビオフェルミンなど),腸管運動調節剤(ガスモチン,ガナトン,セレキノンなど)が症状におうじて下剤といっしょに処方されることがあります.


下剤以外にも便秘の治療法はあるの?
骨 盤に原因する便秘のなかでアニスムスとか協調障害と呼ばれるいきんだ時に骨盤底に力が入りすぎて便が出せない人に対しては,バイオフィードバック訓練とい う排便リハビリのような理学療法を行うことがあります.また直腸瘤や直腸重積と呼ばれるいきんだときに直腸が変形して便が出にくくなる場合は,手術を行う ことがあります.まれですが大腸の蠕動が極端に低下している病気(結腸無力症)では結腸切除術を行うこともあります.

 

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