一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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肛門の病気

痔瘻の治療

最終更新日: August 08, 2013

松田病院 松田保秀


1.痔瘻(じろう)とは?

痔瘻とは肛門内 (入口)と肛門周辺 (出口)との間にトンネル (瘻孔)ができて、時々腫れたり、しこって痛くなったり、膿がでたりする、いわゆるおできのような病気 (感染症 )です。詳しく言うと、歯状線にある肛門小窩というくぼみが細菌の入り口(原発口= 1次口)となり、次いで肛門腺管の感染が起こり、内括約筋と外括約筋の間に感染の塊 (原発巣 )が発生し、そして直腸肛門部の解剖学的なスペースに沿っていろいろな方向に炎症が進展するものです(図1)。肛門周囲皮膚に開口した穴を 2次口といいます。一般的には肛門周辺が腫れてしこって、膿がたまって痛くなった状態を肛門周囲膿瘍(急性期)といいます。しこりから膿が自然にはじけたり、切開されると、後に膿みの通り道(瘻孔)が形成されます。それを痔瘻 (慢性期 )といいます。痔瘻の型には現在大きく分けて4つのパターンがあり、日本では「隅越分類」が愛用されています。 (図2)
 感染の進むスペースによりⅠ ~ Ⅳに分け、歯状線より下を L(low)上を H(high)とします。

図1 図2

2.痔瘻の種類と治療:

痔瘻の治療は手術療法が原則です。膿瘍期でなければ 2~3日を争うほど手術の緊急性はありませんが、複雑化することや 10年以上活動例では癌化があるので、速いに越したことはありません。手術は通常、腰椎麻酔か仙骨硬膜外麻酔で、ジャックナイフ体位または砕石位で行います。手術時間は 10分~30分程度で、 1~2週間入院が一般的です。

1)皮下痔瘻 (Ⅰ型 0~4%):原発口 (入り口)は小さいことが多く、裂肛部から入って比較的浅い瘻管を形成します。気がつかないことも多く、症状がなければ放置しておいてもかまいません。手術は瘻管の切開開放で充分ですが、これだけで手術をすることはありません。

図3

2)低位筋間痔瘻(Ⅱ L型 65~78%):一番ポピュラーなタイプで、入り口(原発口)の 65%は肛門後方にあります。指で挟むと小さな球形の硬結を触知します。原発口が肛門後方では瘻管を括約筋と一緒に切開開放します。治癒期間は平均 40日です。原発口が肛門後方以外では原発口と 2次口を含めて瘻管をくり抜き、肛門側を閉鎖します(くり抜き法=括約筋温存手術)。治癒期間は約4週間です。入院期間が数日しか取れない時や仕事の都合で休めない時はシートン法 (瘻管にゴムひもを通し数ヶ月掛けて治癒させる方法 )を行います。

図4

図4a

図4b

図4c

3)高位筋間痔瘻(Ⅱ H型=4~7%):原発口から硬い瘻管が上行し、直腸壁内で数本に分岐することもあります。瘻管が細いときは確診が困難で、逆に太いときは直腸壁を締め付けるように狭窄を生じ、直腸癌との鑑別を要することもあります。手術は切開開放法と瘻管掻爬 (掃除)です。治癒期間は平均 35日、再発率は 3~5%です。

図5

図5a

4)坐骨直腸窩痔瘻 (Ⅲ|型 13~23%):原発口が6時を中心とする肛門後方にあるので( 95%以上)、触診では恥骨直腸筋を始めとする肛門挙筋の硬化が特徴的です。瘻管が深肛門後隙から左右の坐骨直腸窩を前方へ進展したときは、瘻管が太くなり両側坐骨直腸窩痔瘻(馬蹄型痔瘻)と呼ばれます。一方、左右どちらか片側のみに進展する時は両側型よりは頻度が少ないです。手術は切開開放法、またはくり抜き法・筋肉充填法を用いた括約筋温存療法を行います。治癒期間は 30~50日前後で、再発率は 5~9%です。

図6

図6a

図7

図7a

図7b

5)骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ型 1~4%):坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ型)から進展したもので、触診では肛門後方から恥骨直腸筋の更に上方に炎症性しこりが拡がり、直腸後方の肛門挙筋は板状に硬くなります。手術は肛門後方で瘻管を大きく切開開放し、内部をきれいに掻爬します。治癒期間は 2ヶ月で再発が 15%認められます。

図8

図8a

3.その他重要な痔瘻:

1)多発痔瘻:多くは低位筋間痔瘻が 3~5本あるものです。 2次口の数と痔瘻の本数とが必ずしも一致しません。 1個の原発口が 2~3個の2次口と繋がっていることもあります。可能な限り括約筋を切らないで、シートン法や括約筋温存手術を選択します。

2)クローン病の痔瘻病変:肛門腺感染を呈する痔瘻は通常の痔瘻と同様に扱います。治り難い形のもの、2次口が多発、複雑なルートを持つものなどはシートン法を適用します。以上、何か気になることがあれば専門医の意見を聴いてください。

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