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Original Research Articles
Volume 5 Issue 4 Pages 405-413

Clinical Features and Therapeutic Outcomes of Post-colectomy Enteritis with Ulcerative Colitis
(潰瘍性大腸炎関連の術後小腸炎の臨床的特徴と治療成績)

和訳版Abstract 概要:潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)関連の術後小腸炎(Post Colectomy Enteritis: PCE)は,ときに重症化し,治療に難渋するが,その報告は少ない。臨床的特徴は不詳であり,診断や治療のプロトコールは確立されていない。本研究では、PCEの発生率、臨床的特徴、診断基準、および治療成績を検討することを目的とした。
方法:2010年4月から2019年12月までに当科にて手術を受けたUC患者を対象とした。PCEを発症した患者を後方視的に分析し、UC関連以外の小腸炎は除外した。
結果:術前にUCと診断され、手術を受けた症例は829例であった。術後にクローン病と診断された11例と,分類不能型大腸炎と診断された4例は除外された。22例に周術期に小腸炎を認め、Backwash ileitisの6例、pre-pouch ileitisの5例、感染性腸炎の3例、虚血性腸炎の1例は除外された。最終的に7/814例(0.8%)の患者がPCEと診断された。PCEを発症した患者は全例が全大腸炎型であり、中央値で術後33日(12~248日)目に発症していた。内視鏡検査では,顆粒状粘膜が小腸粘膜に認められた。病変の範囲は、小腸全域にびまん性に認めるもの、全小腸に及ぶが回腸の中域のみ軽度であるもの、回腸領域のみに認めるものなど様々な病型が存在していた。またUC関連の胃十二指腸炎を7例中6例に認めた。全例が抗TNFα抗体製剤で改善を認め、術前に抗TNFα抗体製剤に治療抵抗性を示した症例に対しても有効であった。
結論:PCEは非常に稀な疾患であった。診断の基本は除外診断であり、様々な病型を認めるが、内視鏡所見は顆粒状粘膜が特徴的であった。治療に関しては、TNFα抗体製剤の投与が有効であった。