和訳版Abstract | 便排出障害(defecation disorders:DD)には,排便時に直腸圧が上昇しない便排出力低下(inadequate defecatory propulsion)と,肛門管が弛緩しない骨盤底筋協調運動障害(dyssynergic defecation)の2つの病態がある.我々は便秘症患者の直腸肛門内圧検査(anorectal manometry:ARM)データを分析し,DDの病態に性差があるか検討した.2010年から2015年にDD関連症状(過剰な息み,残便感,用手排便)を主訴に受診し,ARMと直腸バルーン排出検査または排便造影検査を行った558例(平均68.1歳,女性324例)を対象とした.DDはRome IVのF3項に基づいて診断した.排便動作時のARMの異常パターンは,不適切な肛門圧の上昇に直腸圧の適切な上昇を伴うtype Iまたは伴わないtype II,肛門圧が適切に低下せず直腸圧は上昇するtype IIIまたは上昇しないtype IV,肛門圧が適切に低下し直腸圧が上昇しないtype Vの5つに分類した.348例(62.4%)がDDと診断され,男性(73.1%)は女性(54.6%)よりもDDの罹患率が高かった.Type Iパターンは女性 (28.2%) よりも男性 (64.9%) で多かった.一方,type II (42.9% 対 24.0%) とtype IV (20.9% 対 5.8%)パターンは女性で多かった.以上より,Inadequate defecatory propulsion(type II, IV, Vに相当)は女性に多く,dyssynergic defecation(type IとIIIに相当)は男性に多いことが示唆された. |
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