和訳版Abstract | 目的: 大腸手術症例において, 周術期に薬理学的血栓予防を受けなかった患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の発生状況とVTE予防をすべき症例の選択のための凝固線溶マーカーの有用性について検討した. 方法: 周術期に薬理学的血栓予防を受けなかった大腸手術症例70例のVTE発症率と凝固線溶マーカーでのVTE予測能を後方視的に評価した. 結果: VTE発症は11例(15.7%)に見られ, 全例が無症候性遠位型の深部静脈血栓症(DVT)であった. 術後, 凝固線溶マーカーは手術侵襲に対して生理的な変動が見られたが, 可溶性フィブリン(SF), トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT), フィブリン/フィブリノーゲン分解産物(FDP), D-dimerで術後の各時点におけるVTE予測能は中等度の精度であった. 結論: 大腸手術患者で, 薬理学的血栓予防薬投与を受けていなくても, 術後VTEの発生率は低かった. SF, TAT, FDPおよびD-dimerは, 生理的な凝固線溶反応を考慮してカットオフ値を設定すると, DVT予測に有用であった. |
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