和訳版Abstract | 目的 :深部静脈血栓症(DVT)の術前スクリーニングは、術後静脈血栓塞栓症(VTE)の防止のために重要である。しかし、大腸切除術前における下肢静脈超音波検査(LLVU)の適応に関しては議論の余地がある。そこで我々は、大腸切除術前の患者群に対し、術前D-dimerの値が術前LLVUの適応となり得るかを評価し、術後の症候性VTEが抑制につながるかを検討した。 方法 :2013-2020年に当院で大腸切除術を受けた患者を後方視的に参照した(n=2071)。母集団を術前LLVUの適応に基づきClinical Indication group(CG: n=875)とD-dimer orientated group (DG:n=1196)に分類した。CG群では臨床的にDVTが疑われる場合にLLVUを施行し、DG群では術前D-dimerが1.0μg/ml以上の患者に術前LLVUを施行した。 結果: CGでは0.7%に術前DVTが検出されたのに対し、DGでは2.3%に検出された。術後症候性VTEは、術後6ヵ月時点でDG群において有意に減少していた(p=0.020)。多変量解析では、肺塞栓症の既往歴およびCG群が、術後6ヵ月以内の症候性VTEの独立した危険因子であった(p<0.0001および=0.036)。 結論: 大腸切除術前D-dimerが1.0μg/ml以上の場合、LLVUにてDVTのスクリーニングを行うことで術後の症候性VTEは抑制される可能性が示された。 |
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