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Original Research Articles
Volume 9 Issue 1 Pages 105-116

The Impact of Hangeshashinto on Symptoms and Gut Microbiota in Diarrhea-type Irritable Bowel Syndrome: A Retrospective Analysis(下痢型過敏性腸症候群に対する半夏瀉心湯による臨床的効果と腸内細菌叢の変化, MIHAN-R study)

和訳版Abstract 背景: 半夏瀉心湯(HST)に対する有効な治療法は限られている。HSTは抗炎症作用および鎮痛作用が報告される漢方薬であるが,下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)への有効性は十分に検討されていない.本研究ではHSTによるIBS-Dにおける各種症状の改善および効果関連因子,さらに投与前後の腸内細菌叢の変化を解析した.
方法: 本研究は5施設の多施設後方視的観察研究である.対象は5つの関連施設で2019年4月~2023年12月の間にROME IV基準に基づいてIBS-Dと診断され,HST 7.5g/日を2~3週間投与された患者100名とした.評価項目は,排便回数,便性状,腹痛の改善率であった。またHST投与前後で20名の患者から採取した糞便から16S rRNA遺伝子シーケンスにより腸内細菌叢の変化を解析した.
結果: 全100名の性別は男性42名/女性58名、平均年齢69.5±11.8歳であった.症状改善率は,全体で82.0%(82例)であり,男性と女性の改善率はそれぞれ81.0%、82.8%であり、性別による有意差は認められなかった(p=0.816).年齢別では75歳以上が82.9%、75歳未満が81.5%であった(p=0.869).なお排便回数、便形状、腹痛の改善率はそれぞれ59.0%,51.0%,62.0%であった.またHST前後の排便回数/weekは21.7±18.2 vs 14.0±12.6であった(p<0.001).また腸内細菌叢解析ではβ多様性には有意な変化が認められたがα多様性には有意な変化はなかった.またBacteroides (p=0.003)およびRuminococcus (p=0.010)の有意な低下,Megasphaera(p=0.030)とSubdoligranulum(p=0.002)は有意に増加した.
結論: HSTは腸内細菌叢の変化を誘導し,IBS-Dの症状を改善する可能性が示唆された.
倫理委員会承認(京都府立医科大学  ERB-C-2284)