Review Article
Volume 9 Issue 2 Pages 167-178
Hereditary Colorectal Cancer: Clinical Implications of Genomic Medicine and Precision Oncology
和訳版Abstract |
大腸癌の約10%は、癌関連遺伝子の生殖細胞系列における病的バリアントを背景として発生する遺伝性腫瘍であり、代表的な遺伝性大腸癌としてリンチ症候群と家族性大腸ポリポーシスが挙げられる。遺伝性大腸癌の診断は、従来は患者や家系内における大腸癌や関連癌の多発、若年発症、消化管ポリポーシスの存在などの臨床的特徴が契機となることが多かったが、最近ではより包括的なアプローチが拡がっている。また生殖細胞系列における多遺伝子パネル検査の臨床実装により、①まれ ②中等度リスク ③大腸以外の遺伝性腫瘍の原因遺伝子など、従来は困難であった遺伝子における病的バリアントも同定が可能となっている。さらに包括的ゲノムプロファイリング検査やコンパニオン診断など治療薬選択を目的とする検査の二次的所見として、偶発的に遺伝性大腸癌が診断されることも増えている。この総説では、ゲノム医学の最近の進歩が遺伝性大腸癌に与えた影響について、臨床的な観点から論じる。 |