和訳版Abstract | 便失禁に対する外科治療は、肛門括約筋形成術や仙骨神経刺激療法などの低侵襲手術のほかに、順行性洗腸法、有茎薄筋移植術、ストーマ造設術など本邦で施行可能な術式に加えて、海外では行われている生体物質肛門注入術など多種多様である。しかし、仙骨神経刺激療法などの新しい治療法を除いて、便失禁に対する外科治療のエビデンスレベルは概して低い。便失禁に対する外科治療のアルゴリズムは時代とともに変化しているが、良性の病態であるだけに、低侵襲な手技から順に選択すべきである。神経系または脊髄が障害されると、直腸肛門・骨盤底の感覚および運動神経の障害をきたすことが多く、排便調節が困難になり便失禁または便秘の原因になる。便失禁と便秘は、表裏一体の関係にあり一方が改善すると他方が増悪する傾向がある。認知症では、行動異常の結果としてトイレと異なる場所などに排便する能動的な便失禁と便意欠如のために直腸内に充満した糞便が流出する漏出性便失禁がある。 |
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