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Case Report
Volume 1 Issue 3 Pages 100-105

Endoanal Ultrasonography of Mucinous Adenocarcinoma Arising from Chronic Fistula-in-ano: Three Case Reports

和訳版Abstract 慢性痔瘻から発生する粘液癌はまれであり、その早期診断は難しい。この疾患の診断における肛門管超音波検査の役割はまだ検討されていない。今回、我々は肛門管超音波検査が悪性化の診断に重要な役割を演じた慢性痔瘻より発生した粘液癌の3例を報告する。5-20年の痔瘻の既往をもつ3人の男性患者が肛門部の硬結、激しい肛門部疼痛、および粘性膿性分泌物を主訴に当院に受診した。すべての症例で、肛門管超音波検査で括約筋貫通痔瘻と交通し、高エコーと低エコーが混在した多房性腫瘤を描出し、麻酔下での超音波ガイドによる組織生検で粘液癌を認めた。全例に直腸切断手術および所属リンパ節郭清手術が行われた。1名が術後3年目に局所再発で死亡したが、残りの二名は再発なく6年以上生存している。これらの所見より肛門管超音波検査は慢性痔瘻に発生する粘液癌の診断に信頼できる検査法であり、超音波ガイド下の組織生検は悪性組織の確定診断に有用であることが示唆された。したがって、長期間に持続している痔瘻患者(特に臨床症状の増悪を認める場合)に対しては定期的な肛門管超音波検査による評価が望ましい。一度悪性変化が疑われた際には、積極的な超音波ガイドの麻酔下組織生検を行うべきである。そうすることで早期診断、根治的治療、よりよい長期予後が可能になるだろう。