第34回日本大腸肛門病学会教育セミナー
Ⅰ.内科・放射線科・病理科・その他(Ⅰ)
テーマ: 炎症性腸疾患(IBD)診療の最前線
3.潰瘍性大腸炎関連腫瘍に対する内視鏡診断の最前線
久部高司先生(福岡大学筑紫病院消化器内科)
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の長期経過例では,腸管の慢性炎症を背景として大腸癌の発生リスクが高くなり,その発生頻度は一般人口と比較して有意に高いため,長期経過例に対する対策は重要なものとなっている.通常の癌と比較して,背景に炎症があることやbottom up の発育を呈することから早期発見が難しく,多発することが多い.進行癌で発見されると組織学的に低分化型腺癌や粘液癌が多く浸潤傾向が強いため予後不良となる.UC 関連癌早期発見のためにサーベイランス内視鏡が推奨されているが,近年は高解像度内視鏡や画像強調内視鏡観察によりdysplasia や粘膜内癌を診断することが可能となり狙撃生検が主体となりつつある.また,dysplasia に対して内視鏡切除を施行する施設が増えつつあるが,内視鏡切除を標準化するには術前の正確な範囲診断・深達度診断や,背景粘膜の線維化に対する内視鏡切除の技術的な課題の解決や,さらには長期的な異時性病変に対して厳重に経過観察しなければならない.