第34回日本大腸肛門病学会教育セミナー
Ⅱ.外科(Ⅱa)
テーマ: 遺伝性大腸癌と大腸癌術後補助化学療法の知識を刷新する
1.家族性大腸腺腫症 知識を刷新する
石田秀行先生(埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科)
家族性大腸腺腫症は大腸多発腺腫や大腸癌のみならず,大腸外随伴病変に対する生涯にわたる医学的管理が必要である.近年の遺伝子解析技術の進歩に伴い,他の遺伝性大腸腺腫性ポリポーシスや体細胞APCモザイクなどとの鑑別が重要視されるようになった.予防的大腸全摘・J 型回腸嚢肛門吻合術は外科治療のgold standard ではあるが,近年ではIntensive downstaging polypectomy(IDP)による大腸温存治療の成績も報告されている.十二指腸癌の前癌状態ともいえる重症十二指腸ポリポーシスには,膵温存十二指腸切除術のような膵温存術式のほか,IDP も専門施設で実施されている.大腸切除後の主要な死因の1 つであるデスモイド腫瘍に対する治療方針の原則は“watch and wait” であるが,進行性の腹腔内デスモイド腫瘍に対するパゾパニブのような分子標的薬が治療の選択肢となってきている.