第31回日本大腸肛門病学会教育セミナー
Ⅱ.外科(Ⅱ a)
大腸外科領域における最新トピックス
3.世界から取り残されないための治療計略
~局所進行直腸癌に対する集学的治療の温故知新~
北里大学医学部附属医学教育研究開発センター医療技術教育研究部門 教授
北里大学病院消化器センター外科部門主任 下部消化管外科
佐藤 武郎
本邦の大腸癌の特徴は,Stage III 進行直腸癌において,結腸癌に比べて予後不良である.欧米では,Stage III の右側結腸癌は,左側結腸癌や直腸癌よりも予後不良である.
結腸癌では,術後補助化学療法が欧米でも本邦でも標準治療となっているが,進行直腸癌の標準的治療は確立されていない.直腸癌は全生存率の向上だけでなく,独特の再発形式である局所再発のコントロールも重要である.直腸癌の術式としての全直腸間膜切除(Total Mesorectal Excision:TME)は局所再発
率の低下をもたらし,標準手術として全世界で受けいられている.本邦では,腹膜反転部以下のT3 以深の症例では,TME に側方リンパ節郭清を施行する拡大手術と術後補助化学療法を標準としている.一方,
欧米では,術前化学放射線療法の後にTME を行うことが標準治療となっており,日本と欧米では標準治療が異なる.
本稿(講演)では,このような国内外の現状を踏まえて,局所進行直腸癌に対する集学的治療について述べる.