第31回日本大腸肛門病学会教育セミナー

Ⅱ．外科（Ⅱ a）
大腸外科領域における最新トピックス

2．Society 5.0時代における大腸癌外科手術の最前線
　　　札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科
　　　竹政　伊知朗

　本邦の大腸癌年齢調整死亡率は90年代半ばでピークアウトしたが，人口高齢化に伴い罹患数，死亡数はともに増加の一途を辿っている．Society 5.0時代において大腸癌治療成績向上のためには個別化医療が重要であり，最新modalityによる予見的診断，ロボット支援下手術などMISを発展させたdigital surgeryの実現，術前術後のmultidisciplinary treatmentの確立が求められている．
　局所進行直腸癌に対して切除環状断端陰性を確保した直腸間膜全切除が手術のglobal gold standardだが，その治療方針は本邦と欧米で大きく異なる．欧米では，術前療法としてTNT（Total Neoadjuvant Therapy）が提唱され，「watch and wait」戦略も究極のQOL保持療法として注目されている．日本では自律神経温存側方リンパ節郭清を独自に発展させてきた．