第33回日本大腸肛門病学会教育セミナー
Ⅰ.内科・放射線科・病理科・その他(Ⅰ)
大腸癌診断・治療に関する知識をupdate する
3.進行大腸癌に対する薬物治療の進歩
近畿大学奈良病院 腫瘍内科
田村 孝雄
大腸癌の薬物療法には術後の再発を予防する術後補助化学療法と進行・再発に対する延命目的の化学療法があるが,新規抗がん剤の開発,投与法の改善,遺伝子検査等に基づく個別化等により着実に進歩している.術後補助化学療法においては大規模臨床試験結果に基づきCAPOX などが行われるが再発を最小に抑制しつつ副作用の最小化も目指している.進行・再発癌においては一次化学療法後の生存期間の中央値が30 ヶ月を越えるようになっているが,その発生部位やRAS,BRAF,MSI/MMR,TMB,HER2,NTRK 融合遺伝子などの遺伝子バリアント等により使用するレジメンを使い分けることで最良の効果を模索している.
この講演では大腸癌治療ガイドラインを基に大腸癌薬物療法についてレビューするとともに,ガイドラインをより上手に利用できるようガイドラインが意味するところの背景の解釈や治療の要点について概説する.
BRAF 阻害剤,トラスツズマブ,免疫チェックポイント阻害剤等の適応についても述べる.