倫理審査とは倫理審査委員会の承認を得ているとの意味である.
Q1.既存のヒトのサンプル(試料)を用いて研究したいのですが,インフォームド・コンセント(IC)はすべての患者に必要ですか?
Q2.9例以下をまとめた介入を伴わない症例報告は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
Q3.痔核の手術手技に関するビデオの発表をしたいのですが,同意は必要ですか?
Q4.当院での結腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の短期および長期成績を学会発表したい場合には,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
Q5.関連10機関の結腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の短期および長期成績をまとめた学会発表をしたい場合には,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
Q6.大腸癌再発症例における現在未承認薬の抗 PDL-1(programmed cell death ligand-1)抗体薬を使用した症例をまとめて報告したいのですが倫理審査委員会の承認は必要ですか?
Q7.患者の癌組織を利用して,新たに発見された癌関連遺伝子群の発現を検証した発表を行いたいのですが,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
Q8.関連機関から氏名等の情報を削除し研究IDで置き換えた状態のデータを収集して実施した過去の研究におけるデータを用いて新たに研究を実施したいと思います.当院には対応表は存在せず研究対象者の特定が不可能な状態ですが,倫理審査委員会の承認やオプトアウトは必要でしょうか?
Q9.公開されているデータベース,ガイドラインなどをまとめた研究発表,あるいは法令に基づく研究発表は倫理審査委員会での審査を受ける必要がありますか?
Q10.研究が保健事業の一環とみなされる場合は,倫理審査は不要と聞きました.倫理審査が不要となるのはどのような場合ですか?
Q11.続報のような発表に関しては,再度倫理審査を受ける必要性がありますか?
Q12.オプトアウト(情報の公開と研究対象者の拒否権の保障)とはどんなものを指しますか?
Q13.オプトアウトの開示はいつまで行う必要性がありますか?
Q14.包括同意とはどんな同意を指しますか?
Q15.当院には倫理審査委員会がありません.学会発表はできませんか?
Q16.日本大腸肛門病学会では臨床研究の倫理審査は行ってもらえるのでしょうか?
Q17.各機関の規程等と日本大腸肛門病学会の指針が同一でない場合,どちらの内容を優先したらよいでしょうか?
Q18.所属機関の長とは診療科長,部長の認可でよいですか?
Q19.匿名加工情報,仮名加工情報,個人関連情報とはどの様な情報ですか?
Q20.採血は侵襲に当たりますか?
Q21.培養細胞を用いた基礎的研究は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
Q22.ヒト ES 細胞,ヒト iPS 細胞,ヒト組織幹細胞を利用した臨床研究を開始するにはどのような手続きが必要ですか?
Q23.倫理審査委員会を通さず発表した場合には,どんなペナルティが科せられますか?
Q24.発表する際に,自分の研究が倫理指針上どのカテゴリーの研究に属するか,あるいは倫理審査を受けたかどうかを提示する必要はありますか? 利益相反(COI)のようなスライドを作成して提示する必要はありますか?
Q1.既存のヒトのサンプル(試料)を用いて研究したいのですが,インフォームド・コンセント(IC)はすべての患者に必要ですか?
A1.試料について特定の個人を識別することができず,個人に関する情報に該当しない既存の情報を用いた研究の場合はICは不要です.
上記以外の場合であっても,当該研究の目的と相当の関連性がある別研究等で既にICを取得済みのものであれば,ICの取得が困難である場合には通知・公開のみでICは不要です.それ以外の研究は,原則ICが必要ですが,ICの取得が実質困難な場合は社会的に重要と判断される場合に適切な同意が可能であり,更に,学術例外及び公衆衛生例外に該当する場合にはオプトアウトでICに代えることが可能です.
Q2.9例以下をまとめた介入を伴わない症例報告は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A2.10例以上をまとめた症例報告は症例集積研究とみなされ倫理審査委員会の審査が必要です.但し,9例以下であっても治療例と非治療例の比較を行ったり,診療の有効性・安全性の評価を行うなど研究性があるものは少数例でも倫理審査委員会の審査が必要となります.例えば,「○○症例を経験した」「有効な症例を経験した」「安全であると思われた」などの記載は症例報告の範疇として捉えられるが,「有効性を検討した」「安全性を検討した」のような記載がある場合は研究性があると判断される場合もあるので,表現に注意をして下さい.
※未承認・適応外の医療が,研究としてではなく医療として実施された場合は,医療法に従って各機関での手続きを経ていることが必要です.
※「個人情報保護法」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(厚生労働省,平成29年4月14日 (令和5年3月一部改正))」を遵守し,症例報告する旨の同意を原則取得する必要があります.口頭で同意を得て,診療録に同意を得た旨を記録すると良いでしょう.但し,転居や死亡等にて同意の取得が困難な場合は同意の取得は免除されます.その際にも同意取得困難な旨の記録が必要です.機関によって届出などの規定がある場合には,それに従って下さい.何れの場合も,個人が特定できないような配慮が必要です.
Q3.痔核の手術手技に関するビデオの発表をしたいのですが,同意は必要ですか?
A3.症例報告に該当し倫理指針の適用外ですが,「個人情報保護法」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(厚生労働省,平成29年4月14日 (令和5年3月一部改正))」を遵守し,症例報告する旨の同意を原則取得する必要があります.口頭で同意を得て,診療録に同意を得た旨を記録すると良いでしょう.但し,転居や死亡等にて同意の取得が困難な場合は同意の取得は免除されます.その際にも同意取得困難な旨の記録が必要です.機関によって届出などの規定がある場合には,それに従って下さい.何れの場合も,個人が特定できないような配慮が必要です.
Q4.当院での結腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の短期および長期成績を学会発表したい場合には,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
A4.研究対象者の予後を含んだ各種臨床データを利用した研究は,各機関の倫理審査委員会あるいはそれに準じた委員会での審査と,それに基づく機関の長の許可を得るとともに,研究対象者あるいはその代諾者の同意(インフォームド・コンセント:IC)を得る必要があります.但し,過去の症例にさかのぼってあらためてICを得ることが実質的に不可能な場合などは,オプトアウトを利用し,研究への参加が拒否できる機会を保障することでICや適切な同意に変えることが可能です.
Q5.関連10機関の結腸癌における開腹手術と腹腔鏡手術の短期および長期成績をまとめた学会発表をしたい場合には,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
A5.研究の実施体制により対応が異なります.
1)各機関に研究責任者を置き,個々の機関での機関の長の許可が必要です.倫理審査は,研究代表者が審査を受ける倫理審査委員会での一括審査が原則となります.但し機関によっては,再度審査を必要とする場合もあります.
2) 関連機関を、既存の試料・情報の提供のみを行う機関とする場合(共同演者,共著者になりません)
研究機関(研究代表機関)の研究責任者(研究代表者)が,研究計画書に研究実施体制として全ての「既存の試料・情報の提供のみを行う機関」の名称と提供を行う者の氏名を記載しておく必要があります.また,「既存の試料・情報の提供のみを行う機関」で使用するオプトアウトの見本についても倫理審査が必要です.研究が承認された後,提供元の機関の長が許可すれば情報を取得することは可能です.但し,研究実施機関の研究責任者は,提供元の機関名,機関の住所,機関の長の氏名,試料・情報の取得の経緯(例:診療で収集した情報等),本研究の利用に関するICやオプトアウトなどの状況を確認し,試料・情報のトレーサビリティーを確保する必要があります.
Q6.大腸癌再発症例における現在未承認薬の抗 PDL-1(programmed cell death ligand-1)抗体薬を使用した症例をまとめて報告したいのですが倫理審査委員会の承認は必要ですか?
A6.薬剤の適応外使用や未承認薬を使用する場合には以下のとおりです.
1)研究目的ではなく,自由診療や高難度医療等,機関の規定に則り機関の長の許可を得て行った症例を,後ろ向きにまとめる場合は「観察研究」として,倫理審査委員会の承認を得て下さい.但し,研究性のない9例以下の症例報告として発表する場合は倫理審査委員会の審査は不要です.(参照Question 2)
未承認・適応外の医療が,研究としてではなく医療として実施された場合は,医療法に従って各機関での手続きを経ていることが必要です.
2) 研究としてこの治療を実施する場合は,「特定臨床研究」に該当し「臨床研究法」の対象となります.法に基づいた手続きを経てから実施して下さい.
※研究目的で,医薬品や医療機器等を未承認あるいは適応外で使用する研究は,「特定臨床研究」であり,「臨床研究法」の遵守義務対象となります.また,既承認,承認範囲内のものであっても,医薬品や医療機器等の有効性や安全性を評価する場合も「臨床研究法」の遵守努力義務対象となります.なお,企業等から資金提供を受けた医薬品や医療機器等の研究は,対象となる医薬品や医療機器等の承認の有無や適応範囲に関わらず,「特定臨床研究」であり,「臨床研究法」の遵守義務対象となります.
Q7.患者の癌組織を利用して,新たに発見された癌関連遺伝子群の発現を検証した発表を行いたいのですが,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
A7.倫理審査委員会あるいはそれに準じた諮問委員会の審査に基づく機関の長の許可が必要です.また同意取得(インフォームド・コンセント:IC)またはオプトアウトも必要です.
Q8.関連機関から氏名等の情報を削除し研究IDで置き換えた状態のデータを収集して実施した過去の研究におけるデータを用いて新たに研究を実施したいと思います.当院には対応表は存在せず研究対象者の特定が不可能な状態ですが,倫理審査委員会の承認やオプトアウトは必要でしょうか?
A8.取得する情報が提供元にて個人情報(対応表があり容易照合できるもの),個人関連情報(仮名加工情報には該当しないが,提供元において対応表がなく個人を識別できない情報)のいずれであっても研究を行う機関は倫理審査を受ける必要があります.また,提供元で使用するICやオプトアウトの見本についても審査対象となります.但し,提供元で個人の識別ができない個人関連情報については同意の手続き等(IC,適切な同意,もしくはオプトアウト)が不要です.なお,個人情報保護法の規定に基づいた仮名加工情報は他機関への提供は禁止されています.
Q9.公開されているデータベース,ガイドラインなどをまとめた研究発表,あるいは法令に基づく研究発表は倫理審査委員会での審査を受ける必要がありますか?
A9.倫理審査委員会の審査は不要です.しかし引用したデータベースおよびガイドラインなどを必ず明記してください.公開されているデータベース,ガイドラインには個人情報は含まれませんので審査を受ける必要はありません(但し引用したデータベース・ガイドラインは明記する必要があります).但し,公開されているデータベースであっても個人情報に再連結するようなことを行う研究に関しては倫理審査委員会の審査が必要になります.臨床研究法,再生医療等安全性確保法を除いた法令に基づく研究発表は倫理審査委員会の審査は不要です.
Q10.研究が保健事業の一環とみなされる場合は,倫理審査は不要と聞きました.倫理審査が不要となるのはどのような場合ですか?
A10.地方公共団体が地域において行う保健事業(検診,好ましい生活習慣の普及等)に関して,例えば,検診の精度管理のために,当該検診で得られた情報や検体を関係者・関係機関間で共有して検討することは,保健事業の一環とみなすことができ,倫理審査は不要です.
他方,保健事業により得られた人の健康に関する情報や検体を用いて,生活習慣病の病態の理解や予防方法の有効性の検証などは,「研究」に該当し,倫理審査が必要となります.
Q11.続報のような発表に関しては,再度倫理審査を受ける必要性がありますか?
A11.研究計画書に記載された内容の範囲であれば再審査の必要はありません.しかし,元の研究計画書に記載されておらず,後日発案された解析が追加されていれば,倫理審査委員会の承認やオプアウトが必要です.
Q12.オプトアウト(情報の公開と研究対象者の拒否権の保障)とはどんなものを指しますか?
A12.その研究の概要を実施医療機関等の掲示板やホームページなどに公開して,研究対象者が自身の試料もしくは情報をその研究に利用されることを拒否する機会を保障することを指します.オプトアウト文書には下記の項目を記載することが求められています.
① 試料・情報の利用目的及び利用方法(他の機関へ提供される場合はその方法を含む.)
② 利用または提供する試料・情報の項目
③ 試料・情報の提供を行う機関の名称及びその長の氏名
④ 提供する試料・情報の取得の方法
⑤ 提供する試料・情報を用いる研究に係る研究責任者(多機関共同研究にあっては,研究代表者)の氏名及び当該者が所属する研究機関の名称
⑥ 利用する者の範囲
⑦ 試料・情報の管理について責任を有する者の氏名または名称
⑧ 研究対象者等の求めに応じて,研究対象者が識別される試料・情報の利用または他の研究機関への提供を停止すること
⑨ ⑧の研究対象者またはその代理人の求めを受け付ける方法
Q13.オプトアウトの開示はいつまで行う必要性がありますか?
A13.研究開始前に開示し,拒否の機会を保障する必要があります.研究終了時までご提示いただく必要があります.
Q14.包括同意とはどんな同意を指しますか?
A14.一般的には診療の一環として取得された情報や検体(試料)余剰分を,将来実施される様々な研究に利用させていただくことを文書で同意いただくものを指しますが,あくまでも包括的なものであって個人情報保護法上は使用目的の明示として具体性が欠けることから,個々の研究に使用するための同意とは認められません.研究を行うに際して,改めて倫理審査委員会の審査に基づく機関の長の許可と研究対象者へのオプトアウトが必要です.
Q15.当院には倫理審査委員会がありません.学会発表はできませんか?
A15.倫理審査が不要な研究以外は倫理審査委員会の承認を得る必要がありますので,倫理審査なしに発表することはできません.
倫理審査委員会を常設していない機関からの研究発表については,他機関からの倫理審査を受け付けている委員会で審査を受けて下さい.多機関共同研究の場合は,所属する機関の長の許可があれば,代表機関の倫理審査委員会での一括審査が可能な場合もあります.その場合は,所属機関での個別審査は必ずしも必要ありません.
※「倫理審査が不要な研究」については,倫理指針図1「学会発表・論文投稿における倫理指針のカテゴリー分類」および図3「倫理指針のカテゴリーを判断するためのフローチャート」のカテゴリーA倫理審査が不要な研究を参照のこと.
Q16.日本大腸肛門病学会では臨床研究の倫理審査は行ってもらえるのでしょうか?
A16.本学会での演題応募や論文投稿の際には,倫理審査委員会(所属機関又は関連の大学病院・医師会等の倫理審査制度)での審査と,それに基づく機関の長の許可を得ていることが必須になります.倫理審査委員会を設置することが難しい小規模機関に所属する会員への救済措置として,単機関での既存の試料・情報を用いる観察研究,または研究目的で新たに情報のみを取得する観察研究であって侵襲を伴わない研究で,著しい利益相反関係がない研究に限り,本学会に設置された倫理審査委員会で審査を行っております.詳しくは「委員会設置のご案内」をご参照ください.
Q17.各機関の規程等と日本大腸肛門病学会の指針が同一でない場合,どちらの内容を優先したらよいでしょうか?
A17.本学会での演題応募や論文投稿の際には,本学会の指針に従っていただく必要があります.但し,研究の遂行に関しては各機関の規程等に従ってください.最終的な発表内容に関しては,発表者個人とその機関の長が責任を負うものとなります.
Q18.所属機関の長とは診療科長,部長の認可でよいですか?
A18.大学病院などであれば学長もしくは規定により権限を委任された,病院長,センター長,学科長,学類長などであり,その他の医療施設であれば所属する法人の長であるセンター長,施設長,組合長,病院長などに該当するため,規定により権限を委任されていない所属部署の科長、部長の認可では無効となります.
Q19.匿名加工情報,仮名加工情報,個人関連情報とはどの様な情報ですか?
A19.
匿名加工情報とは
個人情報保護法の規定に基づいて,特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元することができないようにしたものをいいます.匿名加工情報の作成に際して利用目的を公表する必要があり,要配慮個人情報の置き換えなど,一般の医療機関が個人情報保護法の規定に基づいた匿名加工情報を作成することは非常に困難と考えられます.
仮名加工情報とは
個人情報保護法の規定に基づいて,他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報のことです.仮名加工情報の作成に際して利用目的を公表する必要があり,仮名加工情報の利用にあたっては個人を識別するための照合を行うことが禁じられています.また,他の機関に提供することも禁じられています.このことから,機関として仮名加工情報に対して独立して安全管理措置を行う責任者が必要です.機関として診療情報について仮名加工情報を作成することは可能ですが,研究者自身がカルテ情報等と照合することが不可能なことから,実際に仮名加工情報を研究で利用する必要性は相当に低いと思われます.
個人関連情報とは
個人情報保護法の規定に基づいた匿名加工情報にも仮名加工情報にも該当しないが,容易照合性がなく個人識別符号も含まない個人に関する情報のことです.既存情報のうち,改訂前の指針において実施された研究等で得られた既存の情報で,対応表が存在しない等で個人を特定することが困難な状態になったもので個人識別符号を含まないと判断される場合には個人関連情報に相当すると考えられます.なお,提供元では個人関連情報であっても,提供先で保有する情報と照合することで個人が特定できる場合には提供先にて個人情報となる場合があるので,この場合にはICの手続き等において注意が必要です.個人関連情報は個人に関連する情報であり,これらを用いて臨床研究を実施する場合は倫理審査が必要です.
Q20.採血は侵襲に当たりますか?
A20.診療で採血した検体の余剰分を用いる場合は,「侵襲なし」とみなされます.
診療として行う採血の際に,研究目的で上乗せして採血量を増やす場合や,研究目的のみで採血をする場合であっても,一般健康診断で行われる程度の採血であれば,「軽微な侵襲」とみなされます.
但し,前者の場合であって,明らかに研究対象者の身体に影響があると考えられる採血量の増加を伴うものや,後者の場合であって,一般健康診断で行われる採血量を超えるものに関しては,「侵襲あり」と判断されます.
Q21.培養細胞を用いた基礎的研究は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A21.一般に入手可能な細胞等を培養する研究は倫理審査委員会の審査は不要です.なお患者さんから得られた試料を用いて培養し研究する場合は,倫理審査委員会の審査が必要です.その場合,原則文書によるICが必要です.
Q22.ヒト ES 細胞,ヒト iPS 細胞,ヒト組織幹細胞を利用した臨床研究を開始するにはどのような手続きが必要ですか?
A22.再生医療等の安全性の確保等に関する法律を遵守する必要があります.具体的には,特定認定再生医療等委員会もしくは認定再生医療等委員会での審査を受けた上で,厚生労働大臣に届出てから実施する必要があります.
Q23.倫理審査委員会を通さず発表した場合には,どんなペナルティが科せられますか?
A23.本学会としては,学会員が常に倫理指針に則って真摯に行動されていることを前提にしています.倫理違反は,基本的に研究責任者が責任を負うことになり,機関の長はその監督責任が問われます.また,違反の事実が判明した場合,学会倫理審査委員会の審議対象になることがあります.
※なお,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(文科省・厚労省・経産省)」では,以下の場合は重大な指針不適合となり,研究機関の長は厚生労働大臣(大学の場合は文部科学大臣にも)への報告が義務付けられています.
① 倫理審査委員会の審査又は研究機関の長の許可を受けずに,研究を実施した場合
② 必要なインフォームド・コンセントの手続を行わずに研究を実施した場合
③ 研究内容の信頼性を損なう研究結果のねつ造や改ざんが発覚した場合
また,「特定臨床研究」に関して違反があった場合は,「臨床研究法」違反となり,研究責任者は処罰の対象となることがあります.
Q24.発表する際に,自分の研究が倫理指針上どのカテゴリーの研究に属するか,あるいは倫理審査を受けたかどうかを提示する必要はありますか? 利益相反(COI)のようなスライドを作成して提示する必要はありますか?
A24.現時点では Medical ethics をご提示頂く予定は有りません.但し,御自身の発表内容が倫理指針のどのカテゴリーに属するのかを充分理解した上で本学会における発表に臨まれる事は“ヒトを対象とした医学系研究”を行う者として当然の基本姿勢であり,本学会での演題発表者に求められる基本ルールであることをご理解下さい.
※本Q&Aは,日本消化器外科学会およびJDDW作成のQ&Aを元に作成しています.