一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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肛門の病気

痔の日帰り手術

最終更新日: September 08, 2014

東肛門科胃腸科クリニック 東 光邦


日帰り手術というのは手術を行った当日自宅に戻り術後を過ごすことができるもので、以前は必ず入院手術が必用であると考えられていたような疾患も、最近では日帰りあるいは短期入院で行う場合が増えてきています。白内障手術や鼡径ヘルニア、下肢静脈瘤などその適応範囲は拡がっています。痔疾患も例外ではなく、良性の疾患であり、社会的なニーズから日帰りでの手術を希望する方も増加しています。痔核・裂肛・痔瘻など殆どの痔疾患は日帰り手術で行うことができます。痔疾患の日帰り手術を多く経験している立場からメリット・デメリット等を考えてみたいと思います。

なぜ日帰り手術なのか?

以前から肛門科を標榜し開業している診療所では、様々な工夫をして日帰り手術、あるいは処置をしている施設はたくさんありました。最近はその適応が拡がり、入院で行っていたような術式でも日帰りで行う施設が増えてきています。医療技術の進歩と相まって医療経済の面からも医療費の軽減がはかることができる日帰り手術は注目されましたが、痔疾患の日帰り手術の拡がりはそれ程ではないように思われます。それは痔疾患の手術を行う施設側の様々な事情により拡大が進まないように思われるからです。しかし患者側からみると痔疾患での手術でも長期の入院は社会的に困難な状況にあり、できるだけ早い社会復帰をと考えるのは当然のことと考えます。痔疾患の場合、白内障や下肢静脈瘤の日帰り手術とやや異なることは術後の痛みと出血の二点があげられます。術後の痛みや出血がある程度コントロールできれば良性疾患でもあり日帰りでの手術での対応にメリットがあると思われます。

日帰り手術の実際

日帰り手術を行う場合の実際の流れをみてみましょう。
まず日帰り手術の対象となるかどうかを決めなくてはいけません。目安としてまず表1のようなことを基準とし、手術に当たっては入院手術と同様に全身状態のチェックが必要となります。年齢や術後の通院治療の事を考慮し一人住まいであるかどうかなどの生活環境も条件のひとつとして勘案しなければなりません。更に痔疾患以外の糖尿病・狭心症・不整脈などの内科的疾患があり血糖降下剤や抗凝固剤など、手術時に影響を及ぼすような薬を服用している場合などは外来手術を希望されてもリスクを伴うことがあるので入院手術が必要になることもあります。

表

術前検査

まず手術が安全に行えるかどうかを判断するために血液検査・尿検査・心電図・胸部レントゲン撮影などを行います。特に問題なければ外来での手術予定を決めていきます。

手術

外来での手術も入院で行う手術も基本的には全く同じ方法で行います。違いは麻酔法で術後帰宅して頂くには術後早めに麻酔が切れて帰宅して頂かなくてはなりませんから、手術終了後早めに麻酔が切れ且つしっかりと効く方法で行うことになります。一般的には仙骨硬膜外麻酔という麻酔法で行うことが多いようです。
尾底骨近くの仙骨に麻酔を行うと肛門周囲のみ鎮痛効果が得られ、麻酔が効いていても歩行することができる麻酔で術後1〜2時間程休んで頂ければ帰宅することができます。鎮静剤なども使用しますので手術中の不安も殆ど無く手術を受けることができます。

内痔核

1.結紮切除法

内痔核に対して一般的に行われる方法で痔核を肛門内から肛門縁の外側まで切離し、痔核を切除、更に出血を予防する為根部を結紮する方法です。最近は術後疼痛や術後早期の出血を防ぐ目的で切除した粘膜面を外側に半閉鎖する方法が一般的です。手術時間は10〜15分程です。

図1

2.ALTA注射療法

ALTA(硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸注射液)(ジオンR)という痔核を硬化縮小させてしまう注射を行う方法です。あまり外痔核部分が大きくない痔核には有効で、この方法ですと術後出血の心配はありませんから術後の生活制限はありません。効果は痔核の状態によって様々で納得のいく結果が得られるかどうか不確実な場合もありますが、最近では痔核結紮切除術との併用や外痔核部分を手術的に切除し内痔核部分にALTA注射療法を行うなどしてできるだけ切除部分を少なくして積極的にALTA注射療法を行う場合もあり、痔核の日帰り手術に大いに活用されています

図2

裂肛

裂肛は先ずは坐剤・軟膏・生活指導などで手術をせずに治療しますが、繰り返される場合や肛門ポリープなどができているような場合は手術を行うことがあります。

1.側方内括約筋切開術

裂肛の原因とされる肛門括約筋の過度の緊張を取るために内括約筋の一部を切離して緊張をとる方法です。肛門ポリープやスキンタグなどがある場合が殆どなので同時に切除します。

2.肛門狭窄形成術

慢性裂肛の結果肛門狭窄を来したものに対する手術法で、括約筋の一部を切開し狭窄を改善、裂肛の結果形成された肛門潰瘍や肛門ポリープなどを同時に切除するものです。この時肛門後方の切開した括約筋部分をSliding Skin Graft(皮膚弁移動術)や形成外科の手法V-Y形成術などで切除部分を形成する方法を行います。

痔瘻

一般的な痔瘻は低位筋間痔瘻といって瘻管が直線的で後方にできるものが殆どです。肛門の解剖学的特徴から場合によっては瘻管が肛門周囲に回り込むような事もあります。それぞれ肛門機能を損なわないような方法で瘻管の入り口となる原発口と出口となる二次口をふさぐような手術を行います。

1.切開開放術

瘻管が後方にある場合に行う方法で瘻管を切除し開放創とするものです。括約筋の切開範囲も大きいのですが確実に治る可能性が高くなります。膿瘍腔がおおきい坐骨直腸窩痔瘻の場合でも瘻管の走行が単純な場合はこの方法を行います。

2.瘻管くりぬき術

瘻管が側方あるいは前方にできている場合には大きく括約筋を切開すると術後治癒創の引きつれなどで肛門が変形を来し機能が損なわれることがあるので、できるだけ括約筋の損傷を小さくする工夫をし、瘻管をくり抜くような方法が行われます。原発口側は閉鎖するようにします。この方法は開放術に比べ治癒過程で治りが悪く再発することも屡々あります。

3.シートン法

瘻管に輪ゴムを通し時間を掛けて瘻管を開放する方法です。一期的に切開開放する方法よ り括約筋の損傷が少なく機能が比較的保たれる利点があります。完全に解放されるまでに多少時間が掛かり数ヶ月かかることもあります。
瘻管くりぬき術と併用し、瘻管の外側部分は切除し肛門管に近い部分にシートン法を行うなど工夫することで根治性を高め括約筋の損傷も少なくする方法も行われています。

図3

痔瘻の形が複雑で切除範囲が大きくなるような坐骨直腸窩痔瘻の複雑な場合で術後に排便や食事の制限が必要となるような場合は日帰り手術ではなく入院手術が必要となります。

その他

尖圭コンジローマ、膿皮症といった肛門周囲にできる皮膚疾患なども日帰り手術で行うことができます。

まとめ

痔疾患の日帰り手術は技術的な進歩や工夫で以前のように長期の入院が必要となる場合は次第に減ってきていると思われます。しかし全て日帰り手術が可能というわけでは無くリスクを伴うものでもあり、患者さんの理解と医師側の状況、地域の医療状況などで事情が変わってきます。術後に痛みが強く入院が必要となったり、術後の出血で入院処置が必要となったりする場合もあります。後方支援病院などと連携がとれているかも日帰り手術を行う際の重要な要件の一つでしょう。日帰り手術のメリット、デメリットを正しく理解して頂ければ肛門疾患の日帰り手術は増加していくと考えられます。

 

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