一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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肛門の病気

痔核についてのQ&A

最終更新日: February 01, 2022

東葛辻仲病院 松尾 恵五


痔核(イボ痔)について、分かりやすく簡潔にQ&A形式で解説しています。
他項の『痔核の治療』には詳しい解説も記載してありますので参照してください。

Q1. 「痔核」って何?

痔核とは肛門領域の静脈瘤と考えられていましたが、それに加えて肛門の粘膜の下のクッション状の組織がゆるんでしまって、肛門の外に脱出するようになったものも痔核と考えられています。
俗称では痔核のことを「イボ痔」とも言われています。

Q2. 「痔核」の種類は?

肛門の内側1~2cmの部位にできる「内痔核」と、それより外側寄りあるいは肛門の外にできる「外痔核」に分けられます。手術を必要とするような痔核は、内痔核と外痔核が合併した「内外痔核」の形になっているものが多くみられます。

Q3. 「痔核」になる原因は?

痔核の基本的な構造(肛門内の静脈叢)は生まれながらにあるものです。
人間が二本足で歩くようになり(直立二足歩行)、心臓より肛門の位置が低くなって肛門に血液がうっ血しやすくなったこと、排便時の強いいきみ、重い荷物を持つ仕事、筋トレで腹圧がかかる、長時間の座り仕事、アルコールの多飲、トウガラシなどの辛いものの多食、お尻を冷やすなどが原因として考えられています。

Q4. 「痔核」の症状は?

痔核の症状は、出血、脱出、痛み、腫れなどがあります。
痔核からの出血は鮮紅色で、排便時に出血しますが排便終了後には自然に止まります。痔核の脱出とは、排便時や怒責時に強くいきむと内痔核が肛門の外に脱出してくることです。内痔核ができる場所には痛みを感じる神経がないため、内痔核が存在しても痛みは感じません。

Q5. 「痔核」は突然できるの?

痔核の元になる基本的構造(肛門内の静脈叢)が、便秘やいきみなどによって増大して何らかの症状を呈するようになるので、通常の痔核は突然できるものではありません。
ただし、「嵌頓痔核」や「血栓性外痔核」は突然できて痛みと腫れがみられます。

Q6. 急に動けないほどの激痛と大きな腫れ―これは何?

嵌頓痔核(かんとんじかく)が考えられます。以前から脱出を繰り返していた痔核が絞扼されて、血流障害のため激痛とともに膨らんで急に戻らなくなり、肛門外に脱出したままの状態になるものです。緊急手術あるいは待機手術が必要です。

Q7. 「脱肛」と「痔核」は異なる病気?

痔核が排便時や怒責時に内痔核が肛門の外に脱出してくる状態を別名「脱肛」と呼びます。「脱肛」という別の異なる病気があるわけではありません。

Q8. 「痔核」は必ず手術をするの?

痔核の症状があるからと言って必ずしも手術をする訳ではありません。出血や肛門違和感、痛みなどの症状は、保存的治療といって肛門をいたわる生活や痔疾軟膏・坐薬などの薬物治療で軽快します。しかし、脱出症状を呈する痔核は徐々に悪化するので、いつか時期をみて手術かALTA (アルタ)療法という痔核局所注射薬による治療が必要になると考えて下さい。

Q9. 「痔核」の治療法は?

  • 保存的治療:排便・生活指導、薬物治療
  • 硬化療法:局所注射薬で止血をはかる
  • ゴム輪結紮療法:専用の小さな輪ゴムで内痔核を絞扼する
  • ALTA療法:ALTA(アルタ)という専用の痔核注射薬で脱出を治療
  • 手術療法:結紮切除法、PPH法など

などがあります。

Q10. 「痔核」の治療のトピックスは?

脱出する内痔核に対する局所注射療法であるALTA療法は、痛みがなく早期に症状が消失するが、再発が多いという短所があります。一方、手術(結紮切除法)は根治度の高い治療で再発もほとんどありませんが、手術後の痛みが強い点が欠点です。両者の利点を活かすように、内痔核はALTAを打ち、そこに連続する外痔核は切除するなどの併用療法が工夫されています。

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