一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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肛門の病気

HIV感染者の肛門疾患

最終更新日: September 11, 2014

どうじん会道仁病院大腸・肛門科 宮崎道彦


 ヒト免疫不全ウィルスHuman Immunodeficiency Virus(HIV)は感染し数年~数十年ほどの無症候性キャリアを経て免疫不全へ進行し後天性免疫不全症候群Acquired Immunodeficiency Syndrome(AIDS)を発症します。HIVの感染経路は本邦では同性間の性的接触が最多です(ただし薬害HIV感染の方は除きます)。
 厚生労働省エイズ動向委員会では、3ヶ月ごとに委員会を開催し、都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表しています。2013年の報告より本邦での感染の推移を図1、図2に示します。残念ながら国内での感染者は未だ増え続けているのが現状です。

図1
図2

 現在、HIV感染症は抗ウィルス剤の開発により治療可能な慢性疾患となっています。すなわちHIV陽性が判明しても適切な治療を受ければすぐに死亡に至る疾患ではありませんし通常の生活を続けることが可能になっています。とにかく症状がなくても心当たりのある方はHIV感染の有無を検査で調べてみましょう。
 これまでHIV感染者は肛門性交により肛門疾患の併存が多かったのですがあまり積極的に治療は行われて来ませんでした。疾患としては尖圭コンジローマ(ウィルス性疣贅)が多く、痔瘻(あな痔)、痔核(いぼ痔)がこれに続きます。多くは非HIV感染者と同じように腰椎麻酔(下半身麻酔)による手術治療が行われます。手術は全身症状のほかにCD4陽性リンパ球数などの免疫マーカーの把握が重要です。
 通常、尖圭コンジローマはHuman Papilloma Virus( HPV)の感染で起こります。本疾患の治療は専用外用剤がありますが同性愛者の場合には肛門の中にも発生していることが少なくないため限界があります。腰椎麻酔で外科医に手術してもらうのが妥当です。
肛門周囲が化膿し膿が貯まる、肛門周囲膿瘍の一部が痔瘻(あな痔)に移行します。肛門周囲膿瘍の時期は切開、排膿のみで炎症を沈静化させ症状が軽くなったところで痔瘻根治手術を行うかを診断します。
 痔核(いぼ痔)の多くは外用剤投与、硬化療法などによる非外科治療が原則ですが繰り返す排便時脱出、頻回の出血などが手術対象となります。
 その他裂肛(きれ痔)、肛門ポリープなどさまざまな疾患が肛門に発症する可能性があります。
 社会全般はもとより医療従事者の間でもHIV感染者に対しての差別や誤解はまだまだ残っています。肛門疾患の治療を受けたい場合にはやはり一般的な医療施設よりも「エイズ診療拠点病院」での治療をお勧めいたします。その際には肛門疾患の治療が可能か事前にお問い合わせ下さい。

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