一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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大腸の病気

大腸内視鏡検査について

最終更新日: December 21, 2022

北摂総合病院 消化器内科 佐野村 誠


はじめに

 日本の部位別がん死亡数では、大腸がんは女性で第1位、男性で第3位であり、大腸がん死亡率は年々増えてきています。そのため大腸内視鏡検査による大腸がんの早期発見、早期治療が重要で、内視鏡検査による検診をお勧めします。
 「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」では、大腸内視鏡検査の適応は、便潜血陽性、血便、便通異常、貧血、腹痛、体重減少・腹部腫瘤などで大腸がんが疑われる方、あるいは炎症性疾患や機能性疾患を疑う場合とされています。また大腸ポリープと診断されたことがある方のほか、赤身肉をよく食べる方、運動不足でお酒をよく飲む方、喫煙者、大腸がんになられた家族がいる方も大腸がんのリスクが高いとされています。

大腸内視鏡検査の前処置

 まずは医療機関にて大腸内視鏡検査の予約をします。そのときに、前回検査の状況、普段の排便状態(便秘など)、治療中の病気、内服しているお薬などについてご相談ください。
 検査前日の食事は、繊維の多い野菜(ごぼう、セロリなど)、種の多い果実、海藻類、きのこ類は大腸内に残ってしまうことがあるので、できれば避けてください。可能なら市販されている大腸検査食(図1)を摂取するとよいです。これにより検査当日の前処置に要する時間が短縮され、腸管洗浄剤(図2)を服用する量も減らすことができます。
 水分は多めに摂って、水、お茶以外にスポーツドリンクや飴なども摂取できます。検査当日の朝食は抜いていただき、処方された腸管洗浄剤を検査の数時間前に服用します。便がきれいになるまで、数回トイレで排便します。大腸から便がすべて排出され、排便が透明に近くなったら、大腸内視鏡検査が可能となります。腸管洗浄剤を服用しているときに腹痛や吐き気などがあったら、飲むのを止めて医療機関に相談してください。


図1


図2

大腸内視鏡検査の実際

 検査衣に着替えて検査を開始します。肛門から大腸内視鏡(図3)を入れて、小腸の終わり・盲腸から直腸・肛門まで観察します。検査のときに、腸の動きを止める注射や麻酔(完全に眠った状態ではなく、意識がある状態での鎮静)を使用することもあります。鎮静剤が効きすぎて呼吸が浅くなったり、血圧が低下することがありますので、モニタリングしながら検査をします。特に異常がなければ、検査は10~30分くらいで終了します。お腹の手術をしたことがある方は、腸が癒着している可能性があるので、あらかじめ申し出てください。また、腸が長い方、肥満の方、痩せた女性は挿入に少し時間がかかることがあります。内視鏡を挿入するときに患者さんの体位を変えたり、お腹を圧迫したりすることもあります。内視鏡の挿入が難しい方では、ごく稀に腸が傷ついたり、穴が開くことがありますので、痛みがあるときは遠慮なくお伝えください。挿入が困難な場合、細い内視鏡やバルーン内視鏡に変更したり、CTコロノグラフィー(図4右)、注腸検査、大腸カプセル内視鏡検査で代替することもありますので、担当医とご相談ください。
 大腸ポリープなどが見付かったときは、その場で詳しく観察することができます(図5)。また小さなポリープに対しては、その場で治療することもあります(図6)。大腸がん(図4左)が見付かった場合、細胞を採って顕微鏡で検査したりします。
 検査後、お腹に空気が溜まってしまうことがありますが、トイレに行っておならをすれば楽になります。検査後は普通に食事をして大丈夫ですが、ポリープを切除したり、細胞を採った場合は、暴飲暴食や過度な運動は控えていただき、特にアルコールは止めておいてください。


図3


図4


図5


図6

おわりに

 大腸内視鏡検査は、内視鏡機器や前処置剤の進歩により、昔に比べてかなり楽な検査になりました。また診断や治療も飛躍的に向上しています。是非、大腸内視鏡検査を受けてみてください。

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