一般社団法人 日本大腸肛門病学会

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肛門の病気

クローン病の肛門病変

最終更新日: October 28, 2015

仙台赤十字病院 舟山裕士


クローン病での肛門病変とは

クローン病の患者さんでは肛門に病変ができやすいことが知られています.その頻度は、いろいろなデータがありますが数十%から90%という数字があります.また、クローン病が発症してからの年月が長くなればなるほど頻度は高くなります.また、大腸病変を有する患者さんほど頻度は高くなります.
クローン病の肛門病変には、三種類あって、①クローン病の病変が肛門に発生したもの(一次病変)、②その病変が原因となっておこってくる病変(二次病変)、そして、③クローン病とは関係なしに偶然に発生した肛門病変(痔核、裂肛、痔瘻など)があります.

クローン病の肛門病変にはどんなものがあるか

①クローン病の病変が肛門に発生したもの(一次病変)
肛門内に腸にできる潰瘍と同じような潰瘍ができることがあり、これを肛門潰瘍と呼んでおります.また、肛門のなかに裂肛といって前方あるいは後方にできる縦長の潰瘍ですが、一般の裂肛(いわゆる切れ痔)とは異なり、クローン病では潰瘍の幅がひろく周りの粘膜がむくんで腫れております.また、肛門の皮膚が腫れて大きくなり表面に潰瘍を生じているものもあります.これらは、すべてクローン病特有の病変であり、まとめて一次病変と呼んでおります.

②一次病変が原因となっておこってくる二次病変
二次病変で最も多いのが痔瘻(じろう)です.痔瘻は瘻孔(ろうこう)といって肛門内の病変からトンネル状に穴が肛門の周りの皮膚に通じているものです.痔瘻の中に膿がたまって腫れてくると肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)といいますが、熱や痛みを伴ってくると切開をする必要があります.(図1)また、裂肛のあとで肛門に皮膚のたるみができ大きく腫れてくるものもあり、皮垂(ひすい)と呼んでおります.肛門全体の炎症が長く続くと炎症により肛門が狭くなることもあります(肛門狭窄).女性の場合、痔瘻が前方に発生し膣に通じてしまうことがあり、膣から便やガスが排泄されることがあります.(肛門膣瘻、あるいは直腸膣瘻

③クローン病とは関係なしに偶然に発生した肛門病変
クローン病でない人に発生する通常の肛門疾患ですが、偶然、クローン病の患者さんに発生することもあります.これに対しては、通常の肛門疾患(痔核、痔瘻、裂肛)に対する治療が行われます.ただ、クローン病による肛門病変との区別はときに難しいことがあります.また、腹部の症状がまったくなく、クローン病の初期症状として肛門病変が発生することがあり、注意が必要です.

図1

クローン病の肛門病変に対する治療

1.内科的治療

クローン病と診断されていれば、内科的治療がまず始められなくてはなりません.特に、①クローン病の病変が肛門に発生したもの(一次病変)では内科的治療を行います.内科的治療には、ペンタサ、アサコールなどのサリチル酸製剤やエレンタール、絶食、中心静脈栄養などの栄養療法、レミケード、ヒュミラなどの抗TNF-α抗体、イムランなどの免疫調節薬を用いた薬物治療などがあります.肛門病変に対しては、フラジールや局所治療として各種の痔疾用薬剤(軟膏、坐剤)が用いられます.また、直腸病変に対しては、ペンタサ注腸、ステロネマ注腸なども用いられます.

2.外科的治療

一次病変から波及した②の二次病変に対しては、必要に応じ外科治療が選択されます.単純で浅い痔瘻に対しては切開開放術がおこなわれますが、複雑または肛門括約筋を貫くような深い痔瘻に対しては肛門機能を温存するためにシートン留置術が用いられます.シートンは「ひも、糸」といった意味で痔瘻に通すもので、内部にたまった膿を排出するために長期間留置して症状を緩和するためのものです.(図2)

図2

一方、これらの治療を行っても、痛みや炎症が落ち着かない場合や排便機能が低下して便回数が非常に多い場合や便失禁を伴う場合には、ストーマ(人工肛門)を造設する場合もあります.重症な肛門病変を有する患者さんでは通常のクローン病患者よりもQOLが低下しており、ストーマを造設することによりQOLが改善することが知られております.(図3)
また、ストーマ造設術のみでは局所の炎症が制御出来ない場合、肛門からの排出が多く日常生活に支障をきたす場合、癌化のおそれがある場合には、肛門も含め直腸を切除して永久的なストーマとする直腸切断術が行われます.一旦、ストーマを造設した患者さんでは肛門機能や癌化の問題により長期的な観点から直腸切断術を選択するケースが増えつつあります.

図3

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